大阪高等裁判所 昭和25年(ネ)219号 判決
控訴指定代理人は、原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする旨の判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述は控訴指定代理人において行政処分は一般に重大な瑕疵ある場合には処分廳自らこれを取り消すことができる。裁決も亦行政処分であるからその処分を爲した行政廳として裁決が違法である場合には自らこれを取り消すことができると述べた外、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。(証拠省略)
三、理 由
中川原村農地委員会が自作農創設特別措置法にもとずいて、昭和二十三年四月二十三日被控訴人所有の本件農地を不耕作地であるとしてその買收計画を定めたので、被控訴人がこれに異議を申し立てたところ却下され、更に同年六月三日訴願を提起したところ、控訴人は本件農地が被控訴人の耕作地であるとの被控訴人の主張を認め同月十九日「訴願人の申立を認容する。中川原村農地委員会は本件農地を買收計画から除外しなければならない」旨の裁決を爲して、該裁決書を被控訴人に送達したこと、その後控訴人が中川原村農地委員会の陳情にもとずいて、さきに爲した被控訴人の耕作地であるとの認定は誤であつて本件農地は不耕作地であるとして同年九月三十日前記裁決を取り消す旨の裁決を爲し、該裁決書が同年十一月二十五日被控訴人に送達されたことは当事者間に爭がない。
よつて右のように訴願廳が一旦なした裁決を後に至つて自ら取り消すことができるか否かについて考えて見るのに、農地買收計画に対する行政廳への不服申立の方法としては都道府縣農地委員会に対する訴願が最終のものであつて、右訴願は市町村農地委員会が定めた農地買收計画に関する爭について上級廳としての権威ある裁断を求める行政上の爭訟行爲である。從つてこれに対する裁決は判定と同じように裁決をなした都道府縣農地委員会を覊束するものであつて、裁決廳はその裁決に民訴第四二〇條に規定する再審事由に相当するような重大な瑕疵があるが、農地調整法第一五條の二八第一項(当時同法第一五條の一八第一項)のような特別の規定による場合の外は、原則として一旦裁決をした以上後にその不当又は違法なことを発見しても、自らこれを取り消し又は変更することができないものと解するのが相当である。しかるに控訴人は敍上認定のように一旦被控訴人の訴願事由である「本件農地が被控訴人の耕作地であるから買收計画から除外せられたい」という請求を容れてその旨の裁決をしておきながら、その後に至り現地を調査したところ、右裁決における認定は誤であつて、本件農地は不耕作地であるとして右裁決を取り消す旨の裁決をしたのであるが、これは控訴人が裁決を爲すに当つて十分な審理をつくさなかつたために事実を誤認したというのであつて、かかる事由は敍上再審事由に相当するような重大な瑕疵とは到底認められない。その他特別の規定による場合とも認められないので控訴人が爲した右裁決の取消処分は違法であつて取消を免れない。よつてその取消を求める被控訴人の請求を認容した原判決は相当であつて本件控訴はその理由がないので、民訴第三八四條、第九五條、第八九條に從い主文のとおり判決する。
(裁判官 大嶋京一郎 林平八郎 大田外一)